乳がんの薬物療法は、乳がんのサブタイプによって治療方針が決まります。
サブタイプは、細胞診または組織診を行い悪性の診断がついたときに追加で調べています。
乳がんのサブタイプ分類
乳がんは、乳がん細胞の性質ごとに5つに分類されており、増殖力の強さや薬剤への反応性などが違います。同じ乳がん患者さんでも、治療薬や治療期間が異なるのはこのためです。
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増殖能 |
ホルモン受容体陽性 |
ホルモン受容体陰性 |
HER2陰性 |
低い |
ルミナルA |
トリプルネガティブ |
高い |
ルミナルB(HER2陰性) |
HER2陽性 |
問わず |
ルミナルB(HER2陽性) |
HER2タイプ |
薬物療法
・ホルモン療法 5~10年
女性ホルモン(エストロゲンまたはプロゲステロン)受容体陽性のがんに用いられます。
閉経前は、エストロゲンががん細胞に作用しないようにする薬(抗エストロゲン薬)を服用しますが、脳下垂体を刺激してエストロゲンの生成を抑制する薬(LH-RHアゴニスト製剤)の皮下注射を併用する場合もあります。(2~5年)
閉経後は、脂肪細胞にあるアロマターゼによってエストロゲンが作られます。そのため、アロマターゼにエストロゲンを作らせないようにする薬(アロマターゼ阻害薬)や、抗エストロゲン薬のどちらか一つを選択します。

・分子標的療法 約1年
分子標的薬とは、がん細胞が血管を引き込んだり、分裂増殖をするメカニズムを狙い撃ちする薬のことで、抗がん剤に比べて副作用が少ないと言われています。
現在、HER2陽性の方だけでなく、HER2陰性の方やトリプルネガティブの方にも使用できる薬が多く開発されていて、状態に合わせて選択できるようになっています。
・化学療法(抗がん剤) 3~6か月
女性ホルモンやHER2がどちらも陰性の方(トリプルネガティブ乳がん)や進行再発乳がんの方に使用されます。がん細胞の増殖のしくみに着目して、その過程の一部を邪魔することでがん細胞を攻撃する薬です。がん細胞だけでなく正常細胞にも影響します。
・術前化学療法 約半年
進行乳がんの方やリンパ節転移陽性の方には、手術の前に化学療法を行うことがあります。
術前に化学療法を行うことで、7~9割の乳がんは小さくなるとされています。
これにより、乳房の切除範囲や、リンパ節の切除などが縮小される可能性があり、手術の負担が軽減されることが期待できます。
HER2陽性の方には分子標的薬を使用します。
☆乳がんの薬物療法について記載しましたが、乳がんの治療薬は日々研究され、新薬が開発されています。標準治療や推奨される薬の選択枝が増えることはとても良い事です。今後も新しい情報があればお伝えしていく予定ですが、個人個人の治療法については主治医とよく相談し、納得したうえで治療を受けることが大切です。