大沢医院

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乳腺外科

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乳腺外科

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乳腺外科では、乳房に関するさまざまな症状(しこり、痛み、分泌など)に対しての診断と治療を行います。
画一的でなく、患者さんに必要な検査(マンモグラフィ、超音波検査、細胞診、組織診等)をした上で解りやすく説明をし、はじめての方には乳房の自己検診法の仕方の指導をいたします。

以下のような症状がある方はお気軽にご相談ください。

  • 乳房に「しこり」を触れる
  • 腕を挙げたとき、乳房に「えくぼ」「ひきつれ」がある
  • 乳首からの分泌(レンガ色)がある
  • 乳首にびらんやただれを認める
  • 乳房全体が赤く腫れていたり、乳房に潰瘍が出来て治らない
  • わきの下のしこり(硬いリンパ節)などを触れる

検査

視触診

医師が目で乳房を観察してくぼみがないか、手でふれてしこりがないかなど観察します。触診で発見できるものはある程度の大きさになったしこりです。しこりがすべて乳がんというわけではありませんが、必要があれば精密検査を行います。

マンモグラフィー

マンモグラフィーは乳房を圧迫して撮影する特殊なレントゲン検査です。当院は最新のデジタルマンモグラフィを導入しモニター診断を行う事で、より精度の高い乳がん検査が可能です。

当院では、富士フィルムのデジタルマンモグラフィAMULET nnovalityを使用しております。

以下、富士フィルムのサイトより抜粋

「高画質」と「低線量」を両立しており、撮影線量を従来の30%に低減し、高精細な画像を提供できるようになりました。

直接変換方式FPD最小画素サイズ50μmにより、乳がんの特徴的所見である微小石灰化の描出能が高まりました。
また、被爆線量に関わる線質を補正することで、約30%の線量を低減しても同等の画質を担保できるようになりました。

超音波下ガイド針生検(マンモトーム生検)

マンモトームとは画像ガイドで使用する乳房専用吸引式組織生検システムです。当院では超音波ガイド下に施行します。局所麻酔のもと、超音波検査で病変を確認しながら針を刺し入れ、針の側面にある吸引口から針内へ組織を吸引し、針内に入った組織をカットして採取します。針を回転させて多方向の組織を吸引できるので1回の穿刺で広い範囲の組織を採取することができます。

超音波(エコー)検査

マンモグラフィは唯一乳がんの死亡率を下げる事が証明された優れた検査ですが、圧迫による痛みの問題や日本人に多い高濃度乳腺の場合、ある一定の割合でがんの見落としが生じる問題も指摘されています。超音波(エコー)検査はマンモグラフィと併用する事で早期乳がんを発見できる割合が上昇する事が証明されています。

エコー検査では、触診では検出できない「小さなしこり」を発見することができます。
また、しこりの内部の状態を詳しく調べることができるので、しこりが良性のものなのか、悪性の可能性があるのかを判別することができます。
当院のエコー検査では、白黒のエコー画像にしこりの硬さのカラー表示を重ねて作るエラストグラフィと、しこり周辺の血流を見るドップラーという検査が可能です。
 一般的に「のう胞」や「繊維線種」といった良性の腫瘤は柔らかく、「乳がん」は硬いといわれていますので、エラストグラフィによってより詳しい診断が可能です。また、良性の腫瘤は血流が少ないですが、乳がんの場合は血流が豊富なことが多いです。
当院では、腫瘤の形状と辺縁の状態に加えて、硬さと血流の情報をプラスし、総合的に判断しています。

乳癌の特徴

不整形
境界 乳腺との境界が不明瞭
硬さ 硬い
血流 血流が豊富

良性腫瘍の特徴

円形 楕円形
境界 乳腺との境界が明瞭
硬さ 柔らかい
血流 血流がない、
もしくは少ない

実績紹介

乳がん検診の受診者数

乳がん検診受診者数
2019年 256
2020年 205
2021年 291
2022年 247
2023年 373

乳がん検診の受診者数

マンモグラフィの検査数と新規乳がん患者数

マンモグラフィ検査数 新規乳がん患者数
2019年 596 24
2020年 1083 36
2021年 1204 45
2022年 1347 61
2023年 1379 54

マンモグラフィの検査数と新規乳がん患者数

新規に乳がんと診断される方のうち、検診を受診していない方が26%を占めています。
乳がん検診を受診していれば、早期発見が可能になりますので検診を受診しましょう。

乳腺外科Q&A

マンモグラフィはどうして痛いのですか?
マンモグラフィ撮影経験者の声を聞いてみました

マンモグラフィ撮影経験者の声

マンモグラフィというと、「痛い」、「苦手だ」といった声が多く聞かれます。
撮影経験者に聞いて感じることは、個人差が大きいということです。アンケートの結果を見ると、「痛くなかった」「思ったより痛くなかった」「痛かったが我慢できる程度」と答えた方を合わせて89%で、年齢による差はあまり見られませんでした。
「思ったより痛かった」、「我慢できないほど痛かった」という方も少数ですがいますので、初めてであったり、前回とても痛かったりして検査に不安を感じていらっしゃる方は、撮影前に担当技師に一言伝えてみてください。

どうして圧迫するのかというと、「画質」と「被爆」が関係しています

乳房は丸くて立体的な部位です。その立体的な乳房を、一枚の写真に収める為には、ただ挟むだけではいい画像が得られません。
大胸筋の前についている乳腺を引っ張り出し、乳腺を手で拡げながら圧迫していきます。
痛みは伴いますが、正しく圧迫して撮影することで、乳腺全体が見やすくなるだけでなく動きによる画像のぶれもなくなり、「画質」のよいマンモグラフィが撮影できます。
「被爆」の観点からも、圧迫して乳房の厚みを減らすことで低線量で撮影することが可能ですし、乳房の厚みが1cm減ると線量は約半分になり、被ばく線量も減らすことができます。
また、圧迫板は半年に一度の精度管理が義務付けられているため、必要以上に圧迫して撮影することはありませんのでご安心ください。

経験者の皆さんに、圧迫して撮影をする意味を知っているかアンケートを取ってみました

圧迫して撮影をする意味についてのアンケート

約80%の方が「知っている」、「なんとなく知っている」と答えていただきました。
「全く知らない」という方は4%と少なかったですが、圧迫の意味を知って、皆さんに納得して検査を受けていただきたいと考えています。
アンケートにご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

痛みを緩和するコツ
  • 月経前や月経中は避ける(月経開始7日目あたりがおすすめ)
    ※月経中に撮影をしても診断に影響はありません。
  • 担当の検査技師とコミュニケーションを取る。
  • 肩の力を抜き、リラックスする。力が入っていると余計に痛いです。
  • 乳房の圧迫が始まったら深く息を吸い込み、ゆっくり息を吐きだす。

どうしても痛みが強い場合は検査技師や医師にご相談ください。

どうしても痛みが強い場合は検査技師や医師にご相談ください

乳がん検診で要精査と返ってきたら?

乳がん検診を受診したら、通常1~2か月ほどで結果が返ってきます。
2019年の全国の乳がん検診受診者のうち、「要精密検査」と判定されたのは全体の6.3%で、そのうち乳がんだったと診断されたのは精密検査のうちの4.7%と報告されています。
※沼津市では、令和4年度の検診受診率がとても低くなってしまいました。その中で要精密検査の割合は全国データと差はありませんでしたが、精密検査を受けた方の中で乳がんと診断された人の割合は全国データと比べて多かった様です。
要精密検査」と書かれていたらとても不安になると思いますが、あくまでも「乳がんかもしれない」という段階なので、あまり心配しすぎず、落ち着いて精密検査に臨んでください。

精密検査のフローチャート

※当院では基本的にはこの順番で検査を行っています。MRI検査やCT検査は、近隣の病院に依頼して検査を受けてきていただいております。

精密検査のフローチャート

乳腺の良性疾患

乳腺には、良性の疾患がたくさんあります。精密検査の結果、良性の腫瘤があると診断されることも多いです。場合によっては半年後に再検査ということもありますので、良性であってもきちんと経過観察をしていきましょう。

乳腺症
乳腺は、月経周期に従って女性ホルモンの影響を受け、周期的に変化しています。
そういった変化の過程で、乳管や小葉の過形成などがおき、しこりを形成したり石灰化を作ったりします。乳腺のう胞も乳腺症のひとつです。
繊維線種
20~30歳代の女性に多くみられるしこりで、乳腺の良性腫瘍の中で最も頻度が高く、自己検診や検診で発見されます。通常は2~3cmまで増殖し、自然に退縮することもあります。基本的に治療は不要ですが、大きなものや他の腫瘍と区別がつきにくい場合は手術で摘出することもあります。
葉状腫瘍
35~55歳の女性に多く見られるしこりで、平均4~7cmと、繊維線種より大きく急速に増大します。50%以上は良性ですが、悪性の可能性があるので組織診などで精査が必要です。葉状腫瘍は良・悪性に関わらず手術で摘出します。
乳管内乳頭腫
30~50歳代の女性に多くみられ、乳頭から分泌物が出たり、腫瘤を認めることで発見されます。良性の疾患ですが、がんと区別をつけるために分泌物の細胞診や腫瘤の組織診を行うことがあります。
高濃度乳房(デンスブレスト)とは?

マンモグラフィを受けた時に、「あなたの乳腺は高濃度乳房(デンスブレスト)です。」もしくは「乳腺の割合が多いです。」と言われた経験はありませんか?
日本人女性は欧米に比べて高濃度乳房の割合が高く、50歳以下の女性の8割は高濃度乳房であるといわれています。
高濃度乳房だと何に注意するべきなのでしょうか?

マンモグラフィでは病変が見えにくくなります

マンモグラフィでは、乳腺は白く写りますが、がんやその他の腫瘤も白く写ります。そのため、腫瘤が正常な乳腺に隠れてしまい、見つけるのが難しいことがあります。

マンモグラフィ イメージ図(わかりやすいように色を付けて表しています)

マンモグラフィーイメージ図

同じ濃度の腫瘤があっても、乳腺の濃度が違うと見え方が変わります。

一般的に閉経後の乳房は脂肪性乳房へと移行していきますが、閉経後も高濃度乳房のままの方も多いです。現在の乳がん検診ではほとんどの自治体でマンモグラフィが行われているので、高濃度乳房の方は、がんが見つかりにくくなる可能性があります。

高濃度乳腺だからマンモグラフィはやらなくていいということではなく、2年や1年に一度マンモグラフィを撮影することによって過去の画像と比較し、陰影の変化を見ることで病変を見つけることも重要です。
また、マンモグラフィは、石灰化を伴う早期乳がんを発見するのに適していますので高濃度乳房であっても乳がん検診は必ず受診しましょう。

大切なことは定期検査と自己検診です
  • 自分の乳房を知り、定期検査を欠かさないこと
  • 自己検診をしっかり行って、乳房の変化を見逃さないこと

※詳しくはブレストアウェアネスを参照

家族歴の有無や高濃度乳房などで、エコー検査を定期的に行った方がいいと判断されることもあります。症状が無い場合は自費での検査になりますが、2年に一度の住民健診だけでは不安だという方は、1年に一度のエコー検査をお勧めしています。

男性乳がんとは?

乳がんは一般的に女性に多い疾患ですが、男性の乳房に発生することもあり、日本では2019年の統計では670人の方が男性乳がんに罹患しています。(がん情報サービス 乳房の統計より)
有名芸能人が男性乳がんであることを告白し話題になりましたが、男性乳がんの背景や診断、治療法、などについて見ていきます。

男性乳がんの危険因子

男性のイラスト

  • 加齢(60~70代に多い)
  • 乳がんの家族歴(母や祖母が乳がん)
  • 肝疾患
  • 肥満
  • 精巣異常
  • 女性化乳房
検査と診断

症状としては、乳輪の後部にしこり(腫瘤)、乳頭からの出血、わきのリンパ節の腫れがあります。乳がんのしこりは触っても痛みが無いことがほとんどです。これらの症状がある場合、必要に応じて乳房のエコーやマンモグラフィなどの画像検査を行います。それらの画像検査で異常が認められた場合は、針で刺して組織を採取する生検検査や、病気の広がりを見る造影CT検査などを行います。

治療

男性乳がんに対する治療は、基本的には女性と同じです。乳がんの病期に準じて治療法を選択します。切除が可能であれば手術を行い、病状に応じて薬物療法(抗がん剤やホルモン治療など)も行います。
男性乳がんは、発見が遅れることも多く、生存率が女性に比べて低いというデータがあります。女性の乳がんと同様、早期発見がポイントとなりますので、乳房のしこりなどの症状に気づいたら早めに受診をしましょう。

女性化乳房との違い

男性も、女性と同様ホルモンバランスが乱れる時期があります。第二次性徴の思春期と、更年期症状が出やすい60~70歳です。女性のように乳房がふくらんだり、触ると痛いしこりとして認められます。前立腺疾患の治療薬や男性用薄毛治療薬などの摂取、プロテインの過剰摂取などでも起こることがあります。女性化乳房から癌になることもありますので注意が必要です。

多くの男性にとって乳がんと診断されるとは夢にも思っていないことでしょう。
今回の男性乳がんのニュースやこのコラムで認知度が上がり、男性乳がんの早期発見につながることができればと考えています。
乳がんになりやすい人はどんな人?

2019年の統計によると、1年間で乳がんに罹患する方は9万7千人を超えています。女性の9人に1人が生涯のうちに乳がんになると言われています。
では、乳がんになりやすい人とはどんな人でしょうか?

2022年の乳癌診療ガイドラインによると、以下の項目において乳がんの発症リスクが高くなると言われています。

家族のイラスト

  • 家族に乳がん、卵巣がん、すい臓がん、前立腺がんの罹患者がいる方
  • 初潮が早い方
  • 閉経が遅い方
  • 出産や授乳の経験がない方
  • 喫煙や飲酒の習慣がある方
  • 肥満の方(特に閉経後は注意)
  • 糖尿病の方
女性ホルモンの影響

近年、女性の社会進出によって晩婚化し、それによって出産年齢も高齢化しています。
出産年齢が高年齢化すると、乳がんの発生や増殖に深く関係のある女性ホルモン(エストロゲン)の影響を長い間受けることになり、これが乳がんに罹患する方が増え続けている一因と考えられています。

遺伝性乳がん

乳がんの5~10%は遺伝性と言われており、血縁関係のある家族親族に乳がんの患者が多いほど、乳がんを発症するリスクが高くなります。
また、血縁関係のある家族親族に卵巣がんやすい臓がん、前立腺がんの患者がいる方も、乳がんの発症リスクが高くなる可能性があります。当院でも、これらの病気の家族歴がある方には、若いうちから定期的に乳がん検診を受診するようにお知らせしています。

日常生活の影響

喫煙(受動喫煙を含む)や飲酒をされる方も発がんリスクが高いことがわかっており、特に喫煙においては世界中で研究が行われており、関連性はほぼ確実と言われています。
飲酒に関しても、摂取量が多いほど乳がんの発症リスクが高まることがわかってきています。アルコールを摂取する際は毎日の摂取は控え、ほどよい量にしましょう。
また、肥満の方(BMI 30以上)は様々な生活習慣病のリスクになる事が知られていますが、乳がんの発症リスクも高めることが知られています。日頃から運動をしたり、食事に気を付けて、太りすぎないように気を付けたいですね。

糖尿病の方

糖尿病の方も乳がんになりやすいことがわかっています。高血糖や高インスリン血症によって様々ながんを誘発している可能性が高いと言われています。

これらの項目にあてはまるからといって必ず乳がんになるということではありませんが、他の人より「リスクが高い」ということ認識し、定期的に検診を受診することが大事です。逆に一つも当てはまらないから乳がんにならないと安心することは禁物です。誰にでも乳がんになる可能性がありますので定期検診を受け、ブレストアウェアネスを心がけましょう。
ブレストアウェアネスとは何ですか?

ブレストアウェアネスと言うと、聞きなれない方も多いかと思いますが、年齢に関係なく、
『乳房を意識する生活習慣』のことをいいます。
自分自身が乳房の状態に日頃から関心を持ち、乳房の変化を感じたら速やかに医師に相談するという正しい受診行動を身につけましょう。

ブレストアウェアネスの4つのポイント
  • 自分の乳房の状態を知る
  • 乳房の変化に気をつける
  • 変化に気づいたら検診を待たずに乳腺外科を受診する
  • 自覚症状がなくても40歳になったら2年に1度乳がん検診を受ける
1ご自分の乳房の状態を知る

乳房のチェック

着替えや入浴、シャワーなどの際に乳房を見て、触って、感じるということです。
しこりを探すという行為や意識は必要ありません。自分の乳房の感じや月経周期による変化を知っておくことが重要です。

メタボリックシンドローム該当者(H30全県 特定健診)

  • 見るときのポイント
    鏡に向かって腕を上げ下げし、乳房の変化をチェック
    くぼみ 
    ひきつれ 
    ただれ

  • 触るときのポイント
    3~4本指をそろえて10円玉大の「の」の字を書くようにして乳房全体をチェック
    脇の下をチェック
    乳首を軽くつまんで異常な分泌物がないかチェック

2乳房の変化に気を付ける
  • 乳房の腫瘤の自覚
  • 乳頭からの分泌物
  • 乳房の皮膚の凹みや引きつれ
  • 乳房痛
3変化に気づいたら検診を待たずに乳腺外科を受診する

2にあるような乳房の変化は、すべてが乳がんの症状ではありませんが、気づいた変化ががんの早期の症状の可能性があります。なるべく早く乳腺外科を受診し、適切な診断を受けましょう。

440歳になったら2年に1回乳がん検診を受ける

検診マンモグラフィ

検診マンモグラフィ
乳がん検診の目的は、乳がんを早期に発見し、乳がんで亡くなる女性を減らすことです。現在、乳がん死亡率の減少効果が証明されている検査方法は、マンモグラフィのみです。日本人女性の乳がんの好発年齢が45~49歳と60~64歳ですので、日本では40歳以上の女性に対してマンモグラフィを使用した乳がん検診が推奨されています。
当院でしこりを自覚して乳がんと診断される方の多くは検診を未受診の方が多いです。
乳がんは自覚症状がないまま進行することが多いですので、検診を定期的に受診することが大切です。また、良性疾患や乳がん以外の他の病気である可能性もありますので、何か変化や違和感などがありましたらお早めに乳腺外科を受診しましょう。

当院には、乳腺の認定医に加え、乳がん看護認定看護師、検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師が在職しています。乳腺について気になる事があればご相談ください。

乳がんのステージって何ですか?

どの病気でもそうですが、乳がんにも進行度というものがあり、ステージ(病期)と呼ばれています。そのステージによって、選択する治療が変わってきますので、ここでは、乳がんのステージ分類について知っておいてほしいことを記載していきます。

ステージ分類とは

乳がんのステージ分類は、腫瘍の大きさ(T)、リンパ節への転移(N)、他臓器への転移(M)という3つの要素を合わせて決定します。
乳がんが疑われる場合、CT、MRIといった画像診断で追加の検査をします。その画像診断でなお乳がんの疑いがある場合、細胞診や組織診をして、乳がんと確定診断がなされます。
手術前の画像診断によっておおよそのステージがわかりますが、手術によって腫瘍を取り除き、近くのリンパ節を調べ終わってからステージが最終確定します。手術前の画像診断において腫瘍が大きく、リンパ節への浸潤が広範囲にわたる場合は、手術よりも先に抗がん剤を投与して腫瘍を小さくすることが必要な場合もあります。

ステージ 大きさ(T) リンパ節への転移(N) 他臓器への転移(M)
ステージ0 しこりはふれない
(非浸潤がん)
なし なし
ステージⅠ 2㎝以下 なし なし
ステージⅡ A 2㎝以下 あり なし
2~5㎝ なし なし
B 2~5㎝ あり なし
5㎝以上 なし なし
ステージⅢ A 5㎝以上 あり なし
B 問わず 多数あり なし
C 問わず 皮膚や胸壁への浸潤あり なし
ステージⅣ 問わず 問わず あり
スクロールできます
ステージごとの5年生存率

5年生存率とは、癌などの病気の予後を予測するために使われる医学的な指標で、診断から5年経過後に生存している患者の比率を示しています。治療効果の判定のために使われることが多いです。
ステージ分類でポイントとなるのは、腫瘍の大きさと、リンパ節や遠隔臓器への転移があるかどうかです。さらに、ステージによって生存率が変わってきます。国立がん研究センターの統計によると、ステージⅠ~Ⅱまでの5年生存率は約95%、ステージⅢになると5年生存率は80%まで下がります。
※ステージ0の方の5年生存率は100%です。10年の相対生存率も100%です。

乳がんステージごとの生存率票

出典:がん情報サービス

※ネット・サバイバルとは、「がんのみが死因となる状況」を仮定して計算する純生存率のことです。

乳がんの治療方法はどのようなものがありますか?

乳がんの確定診断がなされた後は、さらに精密検査を行い、治療計画を立て、どのように治療を進めていくのかを決定します。一口に乳がんと言っても、がん細胞がどんな性質を持っているのかによって、選択する治療が変わってきます。

乳がん治療のおおまかな流れ

乳がん治療のおおまかな流れ

手術療法

ステージ0~Ⅰの乳がんではまず手術療法が選択になります。
手術療法には乳房を全部摘出する方法と、乳房を部分的に切除する方法があります。

  • 乳房切除術(乳房全摘術) 
    入院期間は1週間(腋窩リンパ節を取る場合は2週間)
  • 乳房部分切除術(乳房温存術) 
    入院期間は3、4日

手術の結果、再発の可能性がある場合は放射線治療や薬物療法を追加で行います。

放射線治療

乳房部分切除術の方や、乳房全切除術(乳房全摘術)の方で再発リスクが高い方は、手術した乳房に放射線を当てます。放射線を当てると、正常組織はダメージを受けた後回復するのに対し、がん細胞はダメージを受けると修復できません。その作用を利用して、目に見えない小さながん細胞をやっつけます。
期間は約1か月~1か月半ほどかかりますが、外来で治療が可能です。
※放射線治療を伴う乳房部分切除術と乳房切除術では、生存率や遠隔転移する可能性などの治療成績に差はありません。そのため、温存可能な場合では、より見た目を損なわない乳房温存術を選択することもできます。また、乳房は全摘出し、再建(シリコンや自分の体の一部を使う)を選ぶ方も増えています。

乳がんのラジオ波焼灼療法が保険適応になりました
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2023年12月より、早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法(RFA)が保険適応になりました。腫瘍の大きさが1.5cm以下などの条件を満たせば適応になります。

RFAは、がんの中に細い針状の電極を差し込んでラジオ波帯の電流を流し、発生する熱を利用して焼灼する治療法で、手術に比べ患者さんの身体への負担が少ない治療法です。2004年より、肝がんに対して多く使用されてきましたが、近年肺がんや骨腫瘍などにも適応が広がってきています。

2024年11月現在、治療ができる施設が84施設と増えてきていて、乳がんの新しい治療法として選択肢の一つとなってきております。